文章の下書きも、資料の素材も、会議の記録も、生成AIに任せられると聞きます。ただ、中で何が動いているのかが分からないと、どの作業まで任せてよいのかを社内で決められません。
生成AIとは、学習したデータをもとに新しいコンテンツを作り出すAIです。文章を作る中核にあるのがLLM(=膨大な文章から語と語のつながりを学習した大規模言語モデル)で、次にくる語を確率で選びながら文章を組み立てます。もっともらしいだけの内容が混ざることもあります。
この記事では、生成AIの仕組みと種類から、業務での使われ方、導入で変わること、使う際の注意点までをご紹介します。
生成AIとは、技術としてはどのようなものなのでしょうか。Google Cloud の公式ドキュメントは、生成AIを「ML の分野の一つで、ML モデルを開発して新しいコンテンツの生成に使用します」と説明しています。生成AIが文章を返すまでの流れは、膨大な文章から語と語のつながりを学習し、入力された文を読み取り、次にくる語を確率で選ぶ、という3つに大きく分かれます。
図1:入力を受け取ってから、一語ずつ文章を組み立てるまでの流れ。
拡大図1:入力を受け取ってから、一語ずつ文章を組み立てるまでの流れ。
閉じる 出所:GMO AI検索ラボ では、生成AIの中心にあるLLMは、文章をどのように組み立てているのでしょうか。Google for Developers によると、LLMはトークン(=単語や文字の断片で、文章を数えるときの最小の単位)、またはトークンの並びを予測するモデルです。予測は何段落にも及ぶことがあり、文章がまとまって返ってくるのは、この予測を続けた結果です。
この予測を支えているのがTransformer(=文章のどの語がどの語と関係するかを一度に見比べる設計)です。論文「Attention Is All You Need」がarXivへ投稿されたのは2017年6月12日で、この論文でTransformerを導入したと Google Research が自社のブログに書いたのは、同じ年の8月31日です。
Transformerの中心にあるのは自己注意(self-attention)という仕組みです。Google for Developers は、これが「入力された他のトークンのそれぞれが、このトークンの解釈にどれだけ影響するか」を問うものだと説明しています。Google Research のブログは、文中のすべての語の関係を、位置に関わらず直接とらえると書いています。代名詞が何を指しているかも、周囲の語との関係の強さから読み取られます。
完全なTransformerはエンコーダとデコーダで構成される、というのが Google for Developers の説明です。エンコーダが入力された文章を中間の表現へ変え、デコーダがその表現を読める文章へ戻す、という役割の分かれ方になります。
注意しておきたいのはこの予測が確率にもとづくという点で、Google for Developers は、LLMがハルシネーションを起こすこと、つまりその予測にはしばしば誤りが含まれることを、そのまま書いています。公開する前に人が内容を確かめる工程は、この性質がある以上、外せません。
仕組みについての記述と、その出どころと、確認日を並べました。英語の原文は、語順を変えずに日本語へ置き換えています
仕組みについての記述 出どころ 確認日 LLMはトークン、またはトークンの並びを予測する LLMs: What's a large language model?(Google for Developers) 2026年9月23日 自己注意は、入力された他のトークンがこのトークンの解釈にどれだけ影響するかを問う 同上 2026年9月23日 完全なTransformerはエンコーダとデコーダで構成される 同上 2026年9月23日 LLMはハルシネーションを起こし、その予測にはしばしば誤りが含まれる 同上 2026年9月23日 Transformerは注意機構だけにもとづく設計で、再帰と畳み込みを完全に捨てる Attention Is All You Need(arXiv・2017年6月12日投稿) 2026年9月23日 この論文でTransformerを導入した Google Research のブログ(2017年8月31日) 2026年9月23日
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生成AIには、どのような種類があるのでしょうか。何を生成するかで系統が分かれ、Google Cloud のモデルの一覧にも、文章を扱うモデルと並んで、画像を生成するモデル、動画を生成する Veo、音楽を生成する Lyria が載っています。
図2:文章・画像・動画・音楽で、生成する対象ごとにモデルが分かれている。
拡大図2:文章・画像・動画・音楽で、生成する対象ごとにモデルが分かれている。
閉じる 出所:GMO AI検索ラボ 文章を作る系統の代表がLLMで、要約・翻訳・下書きの作成といった、言葉を扱う作業に使われます。同じ文章の作業でも、要約は材料が手元にあり、下書きは材料が足りないことがあるので、確かめる手間は同じになりません。
画像・動画・音楽の系統はそれぞれ別に育っており、Google Cloud の一覧では、動画の生成に Veo、音楽の生成に Lyria という名前が付いていて、文章のモデルとは別の製品として並んでいます。
近年は複数の種類をまたいで扱えるモデルも広がっており、Google Cloud はマルチモーダルモデルを「複数のモダリティのデータを扱うモデル」と定義しています。Gemini については、画像・動画・テキストなど複数のモダリティからの情報を処理できる生成AIモデルのファミリーだと説明しています。
どの系統でも入り口になるのはプロンプト(=AIへ入力する文)で、Google Cloud はこれを「レスポンスを引き出すために生成 AI モデルに送信する自然言語のリクエスト」と定義し、画像や音声や文書も含められるとしています。
種類が増えるほどどれを使うかが業務の判断になり、文章の下書きにはLLM、素材づくりには画像や動画のモデルというように、目的から選ぶ形が現実的だと考えられます。
生成する対象と、代表的な使い方と、公式ドキュメントで確かめる場所を並べました(2026年9月23日確認)
生成する対象 代表的な使い方 公式ドキュメントで確かめる場所 文章 要約・翻訳・下書きの作成 LLMの説明(Google for Developers) 画像 素材やラフ案の作成 モデルの一覧(Google Cloud) 動画 短い動画の作成 モデルの一覧にある Veo(Google Cloud) 音楽 楽曲や音の作成 モデルの一覧にある Lyria(Google Cloud) 複数の種類 画像と文章をまたぐ指示 マルチモーダルモデルの定義(Google Cloud)
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生成AIの使われ方はチャットの画面の中だけにとどまらず、専用の画面を開かなくても、ふだんの業務ツールの中で支援を受けられる形が広がっています。ChatGPTやGeminiのような対話サービスに加えて、メールや文書や会議といった、毎日触れている道具の側へ機能が入ってきました。
図3:対話サービスから、業務ツールや開発の現場への組み込みへ広がっている。
拡大図3:対話サービスから、業務ツールや開発の現場への組み込みへ広がっている。
閉じる 出所:GMO AI検索ラボ Google Workspace は、Gemini を業務のアプリへ組み込んでいます。公式サイトには「Gmail、Google ドキュメント、Google スプレッドシート、Google Meet などの使い慣れたツールと AI がひとつに」とあります。メールの作成や資料づくりの途中で、ツールを切り替えずに支援を受けられる形です。
ソフトウェアの開発でも同じ形が広がっており、GitHub Docs は、GitHub Copilot を「ソフトウェアの記述、理解、出荷に役立つ AI アシスタントです」と説明しています。そのうえで、入力時にコードが提案され、コードベースに関する質問に回答すると書いています。
同じページには各提案を確認して適用するとも書かれており、提案がそのまま採用される前提ではなく、人が内容を見てから取り込む使い方が、公式の案内の側でも前提になっています。
使われる場面と、公式の記述と、確認日を並べました。いずれも公式ページに書かれているものです
使われる場面 公式の記述 確認日 メール・文書・表計算・会議 Gmail、Google ドキュメント、Google スプレッドシート、Google Meet などの使い慣れたツールと AI がひとつに(Google Workspace) 2026年9月23日 ソフトウェアの開発 ソフトウェアの記述、理解、出荷に役立つ AI アシスタントです(GitHub Docs) 2026年9月23日 コードの入力中 入力時にコードが提案され、コードベースに関する質問に回答する(GitHub Docs) 2026年9月23日 提案の採否 各提案を確認して適用します(GitHub Docs) 2026年9月23日
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生成AIを業務へ入れると下書きを用意するまでの時間が短くなり、要約・翻訳・議事録の整理のように、手を動かす時間が読めていた作業ほど、先に形になるものが出てくる効果が見えやすくなります。効果の大きさは業務によって違うので、まず1つの作業で試してから広げる順が現実的だと考えられます。
図4:作業の時間が短くなることと、発信する内容の責任が同時に動く。
拡大図4:作業の時間が短くなることと、発信する内容の責任が同時に動く。
閉じる 出所:GMO AI検索ラボ 仕事の分担も変わり、人が最初の1文字から書いていた形から、AIが下書きを出して人が直して仕上げる形へ移るので、時間の使いどころが書く作業から確かめる作業へ寄っていきます。
いっぽうで外へ出す内容の責任は動かず、生成AIで作った文章や画像を公開すれば、その内容に責任を負うのは発信元の企業です。AIが作ったという理由で、事実の確認や権利の確認を省けるわけではありません。
事業者が拠り所にできる文書もあり、総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン」を公表していて、最新の第1.2版は令和8年3月31日付です。版を重ねている文書なので、社内の規程を作るときは、参照した版と日付を控えておくと後から追いやすくなります。
導入で変わることと、担当が受け持つ範囲を並べました
導入で変わること 担当が受け持つ範囲 下書きが出てくるまでの時間が短くなる 何を任せ、何を人が書くかを決める 書く作業から、確かめる作業へ時間が移る 確かめる観点と順番を手順にする 外へ出す内容の量が増える 公開した内容の責任を負う 社内で使う人の数が増える 参照する指針の版と日付を控えて規程に残す
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出てきた文章をそのまま外へ出す使い方には危うさが残り、LLMは確率で語を選んで文章を組み立てるため、読んだ感じは自然でも、事実と違う内容が混ざることがあります。社内で使い始める前に、出力を確かめる手順と、入力してよい情報の範囲の2つを決めておく形になります。
図5:出力の確認と社内のルールを、利用の前後に組み込む。
拡大図5:出力の確認と社内のルールを、利用の前後に組み込む。
閉じる 出所:GMO AI検索ラボ 著作権の扱いも、先に押さえておく場所です。文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」を令和6年3月15日に、「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を令和6年7月31日に公開しています。どちらも文化庁のページからたどれます。
入力した情報がどう扱われるかは、サービスごとに公式の記載を読んで確かめます。Gemini Apps のプライバシー ハブには、人間のレビュアーが収集したデータの一部をレビューすることがある、と書かれています。
運用の側では、最終確認の担当を先に決めておくと、公開の直前で止まりません。誰が事実を確かめ、誰が権利を確かめ、誰が公開の可否を決めるのかを、業務の手順の中へ書いておく形です。
領域ごとの代表的な使い方と、使う際の要点を並べました
領域 代表的な使い方 使う際の要点 文章の生成 要約・下書き・メールの文面 事実を確かめてから公開する 画像・動画・音楽の生成 素材やラフ案の作成 権利の扱いを文化庁の資料で確かめる コードの生成 コードの補完・提案・説明 各提案を確認してから採用する 業務ツールへの組み込み 文書作成・表計算・会議の記録 入力してよい情報の範囲を先に決める
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生成AIは、学習した内容をもとに新しいコンテンツを作り出すAIです。文章の側の中核はLLMで、次の語を確率で選びながら組み立てるため、事実と違う内容が混ざることがあると、提供元の公式ドキュメントが書いています。
答えを作れることと、その答えの出どころを示せることは別です。Google Cloud は、グラウンディング(=モデルの出力を検証可能な情報源に紐付ける仕組み)について、出力が特定のデータに紐づき、内容のねつ造が起こりにくくなると説明しています。
同じページは、情報源へのリンクを提供することで監査可能性を確保する、とも書いています。裏を返せば、そうした仕組みを挟まない使い方では、出どころは回答の側から出てきません。
業務で使うときは、検索や社内の資料を挟む使い方にするかどうかを、先に決めておく順になります。その決め方によって、出どころを確かめるためにかかる手間が変わってきます。
次に読む記事は、知りたいことによって分かれます。ウェブを検索してから答えを組み立てる仕組みは AI検索とは が扱っています。文章を組み立てているモデルそのものはLLMとは、AIへ入力する文の書き方はプロンプト設計の基本が扱っています。
自社のサイトをAIの回答に出すところから考えたい場合は、お問い合わせが相談の窓口になります。
生成AIとLLMは同じものですか。 同じではありません。生成AIは文章・画像・動画・音楽などを作るAI全般を指す言い方で、LLMはそのうち文章を扱う代表的な技術です。Google for Developers は、LLMがトークン、またはトークンの並びを予測するものだと説明しています。モデルそのものの説明はLLMとはで扱っています。
生成AIはなぜ事実と違う内容を出すことがありますか。 次にくる語を確率で選びながら文章を組み立てているためです。Google for Developers は、LLMがハルシネーションを起こすこと、つまりその予測にはしばしば誤りが含まれることを書いています。公開する前に人が内容を確かめる工程が要ります。
画像や動画にも生成AIは使われていますか。 使われています。Google Cloud のモデルの一覧には、文章を扱うモデルと並んで、画像を生成するモデル、動画を生成する Veo、音楽を生成する Lyria が載っています。複数の種類をまたいで扱えるマルチモーダルモデルもあり、Google Cloud は「複数のモダリティのデータを扱うモデル」と定義しています。
業務で生成AIを使うとき、何から手を付けますか。 入力してよい情報の範囲と、最終確認の担当を決めるところからです。総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン」を公表しており、最新の第1.2版は令和8年3月31日付です。著作権については、文化庁が「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)などを公開しています。
AI検索と生成AIは同じものですか。 同じではありません。分かれ目は、答えを書く前にウェブを検索するかどうかです。Google Cloud は、モデルの出力を検証可能な情報源に紐付けるグラウンディングについて、情報源へのリンクを提供することで監査可能性を確保すると説明しています。検索を挟む側の仕組みは AI検索とは で扱っています。