本文へスキップ

GLOSSARY

シェア・オブ・ボイス

ある話題での露出全体のうち、自社ブランドが占める割合。もとは広告費の占有率を測る指標で、AI回答での言及シェアに応用されます。

しぇあおぶぼいす11分で読めます

シェア・オブ・ボイスとは

シェア・オブ・ボイスは、広告測定モデルの一つとして確立された概念です。英語版ウィキペディアの定義に沿えば、「ある製品・サービス・カテゴリーの市場全体のメディア支出のうち、一社が占める割合」を測るものです。分子に自社の露出量、分母に市場全体の露出量を置く単純な割り算ですが、「自分だけがどれだけ出ているか」ではなく「全体のパイのうち何切れを取れているか」を見る、という視点の切り替えが要点になります。

この「占有率で捉える」発想は、広告費の文脈を離れても応用が利きます。ソーシャルメディア上の言及量の占有率、検索結果での露出の占有率、そしてAI回答での言及の占有率——いずれも「自社の露出量 ÷ カテゴリー全体の露出量」という同じ形で計算できます。当ラボがこの語を用語集に置くのは、AI検索において「自社が競合に対してどれだけ声を出せているか」を測る枠組みとして、この古典的な概念がそのまま使えるからです。

広告の世界には、シェア・オブ・ボイスと市場シェア(マーケットシェア・=売上や販売数量の占有率)を比べる考え方があります。声の占有率が市場シェアを上回っている状態を、成長の先行指標とみなす発想です。この経験則がAI検索にそのまま当てはまるかは慎重に見る必要がありますが、「露出の占有率は、遅れて事業成果の占有率に反映されうる」という視点は、AI回答での言及シェアを追う動機づけになります。声のシェアを取れているかは、将来の顧客獲得の取り分を先取りして見ているとも解釈できます。

なぜ重要か — AI検索における位置づけ

AI検索では、利用者が一つの回答で意思決定を終えることが多いです。その一つの回答文の中に、あるカテゴリーの選択肢として何社が並び、そのうち自社が入っているかどうかが決定的に重要になります。ここでシェア・オブ・ボイスが効いてきます。「AIが◯◯を勧めるとき、10回のうち何回、自社の名前が挙がるか」という言及シェアは、そのカテゴリーにおける自社のAI上の存在感を、競合との相対で一発で示します。

可視性(自社が見えているか)だけを追うと、市場全体で露出が伸びている局面では「自社も伸びている」ように見えてしまいます。しかし競合がそれ以上に伸びていれば、相対的な立ち位置は後退しています。シェア・オブ・ボイスは、この「絶対は伸びたが相対は負けている」という見落としを防ぎます。とくにAI検索は勝者総取り(=上位数社だけが回答に採用され、それ以外は不在になりやすい)の性質が強いため、占有率で自社の順位を把握しておく意義は大きいです。

もう一つ、占有率が経営の意思決定に効くのは、資源配分の判断を助けるからです。限られた予算と人手を、どのカテゴリー・どの話題のAI検索対策に振り向けるべきか——この問いに、自社単独の可視性だけでは答えられません。占有率を並べれば、「すでに高いシェアを握っていて守りに徹すべき話題」と「競合に大きく引き離されていて攻めるべき話題」を切り分けられます。占有率は、攻めと守りのどちらに資源を寄せるかという、投資配分の羅針盤になります。単に自社の露出を眺めるのではなく、競争の地形図として占有率を読むことで、施策の優先順位づけが事実に基づくものになります。

  • 相対性の可視化:自社単独の推移では見えない「競合との勝ち負け」を明示します。
  • 勝者総取りへの警戒:AI回答は少数のブランドしか挙げないことが多く、占有率が低いと「事実上ゼロ」に近づく危険を早期に察知できます。
  • カテゴリー戦略の指針:どの話題で占有率が取れていて、どこで負けているかが分かり、注力すべきテーマを選べます。
  • 先行指標としての性格:声の占有率の変化は、遅れて事業成果の占有率に表れることがあります。早めに手を打つための警報になります。

AI検索が「勝者総取り」に傾きやすい理由は、回答の様式そのものにあります。従来の検索結果は10本のリンクを並べ、下位のブランドにも露出の余地がありました。しかしAIの回答は簡潔にまとめることが求められるため、挙がるブランド名の数は検索結果より少なくなりやすいです。この「枠の狭さ」が、占有率の重要性を押し上げます。露出の総枠が狭いほど、そこに入れるか入れないかの差は決定的になり、占有率の数ポイントの違いが「候補に入る/入らない」の分かれ目になります。従来検索より競争が非連続的で、中位に甘んじる余地が小さいのがAI回答の特徴です。

仕組み — 計算の考え方

シェア・オブ・ボイスの計算は、分子と分母をどう定義するかで決まります。広告の古典的定義では「自社の広告費 ÷ 市場全体の広告費」ですが、AI検索に応用する場合は、露出量の測り方を回答面に合わせて置き換えます。当ラボの用途では、あらかじめ決めた質問群をAIに投げ、その回答群の中で各ブランドが言及された回数を数え、自社の言及回数を全ブランドの言及回数の合計で割る、という形が基本になります。

いずれも「自社の露出 ÷ 全体の露出」という同じ骨格。応用先で露出の測り方を差し替えます。
適用領域分子(自社の露出)分母(全体の露出)
広告(本来の定義)自社の広告費(メディア支出)カテゴリー全体の広告費
ソーシャル自社への言及・投稿数カテゴリー全体の言及・投稿数
AI回答(言及シェア)AI回答内で自社が言及された回数AI回答内で全ブランドが言及された回数の合計

横にスクロールできます

AI回答に応用する際は、「カテゴリーの範囲(どの質問群を対象にするか)」と「言及のカウント方(単純な出現回数か、推奨文脈での言及のみか)」を明確に決めておくことが精度を左右します。範囲を広げすぎると自社と無関係な言及まで分母に入り、狭めすぎると偶然の揺れに振り回されます。当ラボは、事業に直結する質問群を軸に、複数回の観測を平均して占有率を算出する針を基本とします。

カウント方法には、いくつかの重みづけの流儀があります。もっとも単純なのは「登場したかどうか」を1・0で数える式ですが、これだと末尾に一応名前が挙がった場合と、筆頭で強く推奨された場合が同じ扱いになってしまいます。そこで、登場位置(筆頭か末尾か)や文脈(積極的な推奨か、中立的な列挙か、否定的な言及か)に応じて重みを変える式もあります。どの方式を選ぶかで占有率の数値は変わるため、比較の一貫性を保つには、社内で重みづけの定義を固定し、観測のたびに同じ物差しを使うことが欠かせません。物差しがぶれると、占有率が動いたのが実態の変化なのか測り方の変化なのか判別できなくなります。

具体例

同じカテゴリーでも質問の切り口で占有率は大きく変わります。質問群を固定して継続観測することが前提。
質問例AI回答に挙がったブランド自社の言及シェア
「業務用◯◯のおすすめは?」A社・B社・自社(3社が均等に登場)約33%(3社中1社)
「◯◯を選ぶポイントと代表例」A社・B社・C社のみ(自社は不在)0%
「初心者向けの◯◯といえば?」自社が筆頭・A社が併記高い占有率かつ推奨文脈

横にスクロールできます

  • 占有率は「登場したかどうか」だけでなく「どの位置・どの文脈で登場したか」まで見ると実態に近づきます。筆頭で推奨されるのと、末尾に一応挙がるのとでは価値が違います。
  • 複数のAIサービスで占有率を別々に測ります。あるAIでは高シェアでも、別のAIでは不在ということが起こります。
  • 時系列で追います。占有率の絶対値より、上がっているか下がっているかの推移のほうが打ち手の評価に役立ちます。

具体例を一段掘り下げると、占有率は「同じカテゴリー内で質問の粒度を変える」と景色が変わることが分かります。抽象度の高い質問「◯◯のおすすめは?」)では大手が占有率を握りがちですが、悩みや条件を絞り込んだ質問「小規模店舗向けの安価な◯◯は?」)では、その領域に特化した事業者が占有率で逆転することがあります。これは、AIが質問の具体性に合わせて回答するブランドを選び直すためです。ゆえに占有率を測るときは、大づかみな質問だけでなく、自社の強みが効く絞り込んだ質問も質問群に含めておくと、勝てる土俵を発見しやすくなります。占有率は、負けている総論の裏で、勝てる各論を探し当てるための地図にもなります。

誤解・注意点

また、占有率が高いこと自体は良い文脈での言及を保証しません。否定的な話題で名前がよく挙がると、占有率は高くても事業にはむしろ逆風になります。占有率は「量」の指標なので、必ず「質(どう語られたか)」の観測とセットで解釈します。加えて、AI回答は生成のたびに揺れるため、一度の観測で占有率を断定せず、複数回・複数サービスで平均をとる慎重さが要ります。

さらに、占有率の分母に「誰を含めるか」という競合セットの取り方でも数値は大きく動きます。強い競合ばかりを分母に並べれば自社の占有率は低く見え、弱い相手を混ぜれば高く見えます。占有率を語るときは、比較相手の顔ぶれを固定し、恣意的に有利な相手だけを選ばないことが誠実な運用の前提になります。占有率は便利な一枚絵ですが、その一枚絵は「どの質問群で」「どの競合と」「どの重みで」測ったかという設計に強く依存します。数値だけを独り歩きさせず、必ず測定条件を添えて解釈する規律が求められます。

実務 — 占有率を高める進め方

  1. カテゴリーと質問群を定義する:自社が勝ちたい話題を決め、その話題を代表する質問を数十問そろえます。ここが分母の土台になります。
  2. 競合セットを固定する:占有率を比べる相手(主要競合)をあらかじめ決め、観測のたびに同じ顔ぶれで比較します。
  3. 定期観測で基準線を引く:まず現状の占有率を測り、改善の出発点(ベースライン)を記録します。
  4. 負けている話題に打ち手を集中する:占有率0%に近い質問群を優先的に狙い、そこで採用される情報を整えます。全方位より一点突破が効きます。
  5. 推移で評価する:施策の前後で占有率がどう動いたかを追い、量と(推奨文脈での言及比率)の両面で成果を判定します。

関連指標との使い分け

シェア・オブ・ボイスは、可視性・ブランド言及・引用率と地続きですが、役割が違います。それぞれが答える問いを分けて理解すると、どの場面でどの指標を主役に据えるべきかが見えてきます。指標は多いほど良いのではなく、問いに応じて使い分けることで初めて意思決定に効きます。

シェア・オブ・ボイスの持ち場は「競合比の占有率」。他指標と役割が重ならないよう使い分けます。
指標答える問い性格
可視性自社は見えているか絶対量・総合
シェア・オブ・ボイス競合と比べてどれだけ声を出せているか相対量・占有率
ブランド言及名前が触れられたか言及の(リンク不問)
引用率出典として採用された割合はどれだけか採用の頻度(足跡が残る)

横にスクロールできます

とりわけ経営や事業戦略の場面では、シェア・オブ・ボイスが力を発揮します。「自社は伸びているか」という内向きの問いには可視性が答えますが、「このカテゴリーで勝っているか、負けているか」という競争の問いには占有率でしか答えられません。市場全体が拡大している局面では、絶対量はどの社も伸びるため、勝敗は占有率にこそ現れます。逆に、日々の改善活動では引用率やブランド言及のほうが打ち手に直結しやすいです。シェア・オブ・ボイスは、これらの細かい指標を「競争の全体像」へと束ねる、俯瞰のための一枚として位置づけると使いやすいです。

シェア・オブ・ボイスと可視性はどう違いますか?

可視性は「自社が見えているか」という絶対量、シェア・オブ・ボイスは「競合と比べてどれだけ見えているか」という相対量です。市場全体が伸びている局面では可視性は上がっても占有率は下がることがあり、両方を見ないと立ち位置を見誤ります。

もともと広告の指標なのに、なぜAI検索で使うのですか?

シェア・オブ・ボイスは「自社の露出 ÷ 全体の露出」という汎用的な形をしており、露出の測り方を差し替えれば別領域にも応用できます。AI検索では露出を「AI回答での言及量」に置き換え、言及シェアとして使います。

占有率が高ければそれで十分ですか?

不十分です。占有率は量の指標なので、否定的な文脈での言及が多ければ数値が高くても逆効果です。必ず「どう語られたか」という質の観測と組み合わせて解釈してください。

関連する出典

この記事の根拠にした一次情報(=発表元がみずから出している資料)です。

  1. Share of voice — Wikipedia(新しいタブで開く)https://en.wikipedia.org/wiki/Share_of_voice
  2. Generative engine optimization — Wikipedia(新しいタブで開く)https://en.wikipedia.org/wiki/Generative_engine_optimization

CONTACT US

お問い合わせ

調査・取材・共同研究のご相談を承ります。

FOLLOW US

最新情報をチェック

新着のレポートと研究員コラムをお知らせします。

調査レポート日本のAI検索 実態レポート 第1回:通信キャリア編